かかり釣り(筏釣り)は、内湾に設置された筏やカセ(小さなボート)からチヌ(黒鯛)を狙う釣り方で、仕掛けは道糸に針とガン玉を結ぶだけという極めてシンプルなものです。シンプルな仕掛けゆえに道糸の素材や太さ、針の大きさ、オモリの重さなど細かな違いが釣果を左右します。
本記事では、筏釣り歴20年近い筆者の経験をもとに、かかり釣り/筏釣りで使うラインの選び方とおすすめラインを紹介します。
目次
ライン素材の特徴と適材適所
筏釣りで使われるライン素材は主にナイロン、フロロカーボン、PEの3種類です。素材ごとの特性を知ることが最適なライン選びへの第一歩です。
| ライン素材 | 主な特徴(参考) |
|---|---|
| ナイロン | 柔軟性と伸縮性が高く、魚の引きを吸収するクッション性がある。結びやすく扱いやすいため初心者に適しているが、耐摩耗性はフロロカーボンより劣る。水中でやや見えやすく、比重が軽いのでラインが沈みにくい。価格は安価。 |
| フロロカーボン | ナイロンより硬く伸び率が少ないため感度が高く、魚の微妙なアタリを捉えやすい。岩やカキ殻などに擦れても傷付きにくい高い耐摩耗性と水中でほとんど見えない透明度を持ち、紫外線にも強い。比重が高いので水中に沈みやすく、筏釣りのように海底付近を狙う釣りで有利。価格はナイロンより高い。 |
| PEライン | 細くても強度が高く引張り強度と飛距離に優れる。伸縮性がほとんど無いため感度が非常に高いが、伸びない分クッション性がなく魚の急激な引きに対して緩衝が効かない。耐摩耗性が低く障害物に擦れると切れやすいため、通常は先端にフロロカーボンやナイロンのリーダーを結束して使う。比重が低く水に浮くため、トップウォーターや遠投では有利だが、筏釣りでは風や潮の影響を受けやすい。紫外線に弱く劣化しやすい。 |
筏釣りにおける素材の選択
筏釣りではフロロカーボンラインが主流です。フロロカーボンは耐摩耗性に優れ、岩場や筏に付着したカキ殻に擦れても切れにくく、感度が高いため繊細なアタリを逃しにくいという利点があります。
また、比重が高く沈下しやすいのでエサが自然に落ちていき、潮の影響も受けにくいとされています。
ナイロンはコストパフォーマンスや扱いやすさに優れますが、比重が軽く潮に流されやすく、筏釣りには一般的には使われません。
PEラインは近年利用者が増えていますが、穂先への絡みやすさと根ズレへの弱さから初心者には扱いが難しいため、不慣れな方は避けるのが無難です。
ライン太さと長さの選び方
太さ(号数)と長さを適切に選ぶことは、かかり釣り・筏釣りの成功に直結します。
ラインの太さ選び
- オールラウンドは2号 – 筏釣りではフロロカーボンの2号が強度と操作性のバランスが良く、オールラウンドに使えるとされています。
- 細めの1.5号以下 – 浅場や潮流が緩い場所では1.5号以下を使うと潮を受けにくく感度が上がり、繊細な釣りに適します。
- 太めの2.5号以上 – 大物狙いや、まだやり取りに慣れていない人は2.5号以上の太いラインを使うと安心感があります。
- 1.75号のバランス – 水深15 m程度の場所では、1.75号が細すぎず太すぎずちょうど良いと評されています。1.5号では大物が掛かったときに不安が残り、2号では根掛かり時に切れにくいことから、その中間の1.75号が現場で使いやすいと紹介されています。
道糸(メインライン)の長さは水深が釣り場によって異なりますが、少なくとも50 m以上巻いておくことが推奨されています。
水深が15 m程度なら30 m巻けば十分で、使わない部分まで巻くよりも、必要分だけ巻いてこまめに交換するほうがコスト面でも安心です。
PEラインは感度が高く細い割に強力ですが、筏釣りでは穂先絡みや根ズレ等のトラブルが多く、不慣れな人にはおすすめできません。使用する場合は以下を心掛けましょう。
- 号数は0.4〜0.8号程度にして、先端に2〜3号のフロロカーボンリーダーを1ヒロ(約1.5 m)ほど接続する。
- 穂先絡みを減らすためSiCガイドまたはトルザイトガイドを採用した竿を使用する。
- ライントラブルが増えるため、初心者はまずフロロカーボンで経験を積むのが無難です。
おすすめの筏釣りライン
ここでは筏釣りで評価の高いフロロカーボンラインを厳選して紹介します。
第1位 東レ トヨフロン チヌ筏かかり 春夏秋冬
おすすめ理由
- 特殊コーティングにより高い滑り性能と結束強力を持ち、道糸とハリスが同一の筏釣りでも安心。
- 120 m巻きでコストパフォーマンスに優れる。
- 様々な号数があり、1.5〜2号ならオールラウンド、1.75号ならバランス重視の釣り場に適する。
実際に使用すると滑りの良さが際立ち、巻き癖がつきにくいので扱いやすいと感じました。一般の口コミでも「糸さばきが軽く、アタリが取りやすい」「耐久性が高くシーズンを通して安心して使える」との評価が多いです。
第2位 クレハ シーガー 筏ちぬ スペシャルⅡ
おすすめ理由
- 二重構造技術により高強度としなやかさを両立。
- ラインが縮れにくくリールへの馴染みが良いので、ライントラブルが少ない。
- 100 m巻きで必要分を取り分けやすく、価格も手ごろ。
「リールになじんで巻きグセが少ない」「感度が高く魚の反応がわかりやすい」といった声が多く、筆者も深場での使用時にアタリが明確に伝わると感じました。
第3位 オーナー ザイト・筏かかり
おすすめ理由
- 直進性が高くヨレにくいため操作性に優れ、微妙なアタリが出やすい。
- 耐摩耗性が高くカキ殻が多い筏でも安心。
- 50 m×2のツインスプールで扱いやすく、0.8〜3号までラインナップが豊富。
実釣ではヨレの少なさが際立ち、直線性が高いことでアタリが非常に明確でした。愛用者からも「根ズレに強く、長く使っても性能が落ちにくい」との評価が多い製品です。
おすすめライン比較と選び方
それぞれのラインには特徴があり、釣り場や目的に応じて適した選択が変わります。下の表と解説を参考に、ご自身のスタイルに合ったラインを選んでみてください。
| 製品 | 主な特徴 | おすすめの使い方 |
|---|---|---|
| 東レ トヨフロン チヌ筏かかり 春夏秋冬 (120 m巻き / 1.2〜3号) |
特殊コーティングで滑りが良く、結束強度も高い。オールシーズン対応。 | 手返しの良さや糸さばきを重視するオールラウンド派におすすめ。 号数を細かく選べるので釣り場の状況に合わせやすい。 |
| クレハ シーガー 筏ちぬ スペシャルⅡ (100 m巻き / 主に1〜3号) |
二重構造で高強度としなやかさを両立。縮れにくく扱いやすい。 | 扱いやすさを重視する初心者や、初めて深場に挑戦する方に最適。 繊細なアタリを取りたいときやライントラブルを減らしたいときにも向く。 |
| オーナー ザイト・筏かかり (50 m×2巻き / 0.8〜3号) |
直進性が高くヨレにくい。耐摩耗性に優れ、ツインスプール仕様で無駄が少ない。 | カキ殻が多いポイントや深場など、耐摩耗性と直進性を重視するシーンに最適。 ツインスプールで使い分けが簡単なので、こまめにラインを交換する人にも向く。 |
選び方のポイント
- 手返し重視なら東レ – 特殊コーティングの滑りの良さで糸さばきが軽く、ダンゴ投入の回数が多い場面でもストレスがありません。筆者の実釣では巻き癖が付きにくく、オールシーズン安定して使えました。
- 扱いやすさ優先ならクレハ – 二重構造のおかげで糸が縮れにくく、ライントラブルが少ないため初心者にも安心です。口コミでは「リールになじんで感度が高い」といった評価が多く、筆者も深場でアタリが明確に出ることを実感しました。
- 直線性と耐久性ならオーナー – ヨレが少なく直進性が高いため、潮流の影響を受けにくくアタリが取りやすいです。耐摩耗性が高いのでカキ殻や障害物が多いポイントでも安心。使ってみるとタフな状況で頼りになる一本だと感じました。
どのラインも高品質ですが、釣り場の状況や重視したいポイントによって最適解が変わります。
・オールラウンドに使うなら「東レ トヨフロン」
・扱いやすさとトラブルの少なさを求めるなら「クレハ シーガー」
・耐摩耗性と直進性を重視するなら「オーナー ザイト」
を目安に選んでみてください。
筏釣り現場でのリアルな使用感
筆者自身も清水港や沼津の丸高水産貸しボート、長井かかり釣りセンターといった釣り場でここで紹介したフロロカーボンラインを愛用しています。以下は実際に1.5号と2号を使い分けた印象です。
- 1.5号は繊細なシーズンに活躍 – 水温が低く魚の活性が落ちる冬季など、アタリが小さいときは1.5号を使用します。細めのラインは潮の抵抗を受けにくく、軽い仕掛けでも底を感じやすいため、ハリ先へ伝わる微妙な振動がダイレクトに手元に伝わります。特に長井や沼津のように水深があるポイントでは、伸びの少ないフロロカーボンと細いラインの組み合わせによってアタリの明確さが際立ちました。40 cm以上の大物が来る可能性があるため、ドラグ調整ややり取りの丁寧さは必須です。
- 2号は大物狙いの安心感 – 真鯛や大型チヌが期待できるポイントでは2号を使います。太い分だけ根ズレに強く、魚が暴れても安心感があります。清水港のように水深が浅い場所ではアタリがダイレクトに伝わるため、2号でも感度の低下は感じませんでした。沼津や長井の深場でも、重めのダンゴや大型のエサを用いるときは2号の余裕があり、魚を掛けてからも落ち着いてやり取りできます。
- 釣り場による違い – 清水港は浅く潮も緩やかであるため、細めのラインで繊細さを重視しました。一方、沼津や長井の筏は水深があり潮も動くため、伸びの少ないフロロカーボンの特性が生き、号数の違いがアタリの出方に影響しました。1.5号は潮流の抵抗を受けにくい反面、根ズレには注意が必要です。2号は安心感があるものの潮の抵抗を受けやすいので、潮の速さに応じてオモリを調整しました。
こうした使い分けを通じて感じたのは、筏釣りにおいては「釣り場の水深や魚のサイズに応じた太さ選び」「伸びの少ないフロロカーボンのメリットを生かすこと」「潮や風の条件に合わせてオモリやリールをドラグ付きのリールにして調整すること」が重要だという点です。ライン選びの理論と現場での実感を合わせることで、釣果をさらに伸ばせるでしょう。
まとめとライン選びのポイント
筏釣りは仕掛けがシンプルな分、ライン選びの良し悪しがそのまま釣果に影響します。主流は耐摩耗性と感度に優れたフロロカーボンラインで、2号を中心に釣り場や魚のサイズに応じて1.5〜2.5号を使い分けるのが基本です。水深が深い場合や潮が速い場合には細めのラインが有利ですが、強度とのバランスを考えることが重要です。
ナイロンは柔らかく扱いやすいものの、耐摩耗性や比重の点で筏釣りには向きません。PEラインは感度が高い一方で根ズレに弱く、穂先絡みも多いので、使用する場合は細い号数にフロロリーダーを結束し、専用ガイドの竿と組み合わせるなど工夫が必要です。初心者やトラブルを避けたい方はフロロカーボン一択と言えます。
最後に、ラインは消耗品です。特に筏釣りではダンゴを投げたり魚を取り込む過程で傷みやすいため、30 m〜50 m単位でこまめに巻き替え、常に万全の状態で釣りに臨みましょう。
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