チヌのフカセ釣りをしていて、誘いをかけている人はどれぐらいいるでしょうか、堤防などで見かける初級から中級者の方は、もしかするとフカセ釣りでは誘ったことがない人もいるかもしれません。
ただただエサをぶら下げてそこにマキエを撒くなんてことばかりしていませんか?
チヌも学習する生き物ですので、一筋縄にはいきません。いろいろなテクニックを身につけてチヌのフカセ釣りに挑みましょう。
フカセでの誘い方
フカセ釣りので誘い方にも種類があります。
フリーフォール
フカセ釣りでチヌを狙う際に、どのように誘えば効果的なのかをご紹介します。
最も一般的な誘い方は、竿をゆっくりと立てながら道糸を回収し、サシエを浮かび上がらせた後にフリーフォールさせる方法です。ゆっくりと3秒間ぐらいかけて1m程竿を持ち上げて、ラインをフリーにしてサシエを落としていきます。
ヒットする可能性が高いのがこの竿を持ち上げて止めた瞬間とフリーフォールしていく間です。
ウキを見ていては全誘導でも固定でもアタリの判別がつきにくい場合があります。
竿先からでているラインの変化に目を凝らしてください。急にラインが走ったり、スルスルと落ちていたラインが急に止まったりします。すかさずにアワセを入れてみてください。
カーブフォール
ロックフィッシュやバスフィッシングをしている方からすると簡単かもしれませんが、このカーブフォールが効くこともあります。
竿を持ち上げてラインをまっすぐになるようにして道糸のフケをとりながら少しだけ道糸にテンションをかけてサシエを落下させていきます。
岩礁地帯やテトラなど障害物がある場所で有効です。
フリーフォールよりも水の抵抗をうけてゆっくりと落とすことができるので、ここにエサがありますよとアピールすることができます。
ジャンピング
主に底にマキエを溜めて狙っている場合に使える方法ですが、状況が悪ければ魚を散らしてしまうかもしれませんので注意が必要です。
エサが完全に底に着いたら、サシエのオキアミやネリエさがエビが飛び跳ねて逃げるようにピョーンとジャンプさせてあげます。
あとは何事もなかったかのように潮に乗せてサシエを流していきます。
誘いのデメリット
誘いを入れることは魚にスイッチを入れるので非常に重要なテクニックになりますが、効果が見られない場合もあります。特に誘いが効かないのは、サイトフィッシング(見えているチヌを狙う)です。
桟橋の柱やフェリー乗り場などに居つているチヌを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
そういったチヌには誘いはあまり効果的ではありません。向こうからもこちらが見えているためかスーッと姿を消してしまったり、逃げてしまうことが多いです。
動かすことで見切られている感じがします。
誘う間隔と回数は?
誘いをする場合は、誘いすぎて魚に警戒心を与えてはいけません。
1投につき2,3回までにしましょう。また誘う間隔は3分以上開けて、サシエが海中でゆったりと漂う時間を確保してください。
案外近くにいてエサを食べようとしているかもしれません。
エサの種類で誘いが変わる
サシエに何を使うかによって誘いの仕方や、回数を変えてみるのもよいでしょう。
オキアミで誘いをかけると他の魚の注意を引くことでエサが持たないことも多いです。
誘いをかけるということは、エサをここにあるよと目立たせることでもありますので、時と場合によって使い分けが必要になります。ネリエサを使った誘いをするときには、誘う方法だけでなく、エサ付けを変えてみるのもひとつの手です。
平たくエサ付けすれば、平らの面が水の抵抗を受けてヒラヒラを落下していきます。
ムギが水中で落下するような動きになります。
逆に小さく丸くエサ付けすれば、ストーンと一直線に落ちていきます。
使用する撒き餌によっても落下速度は変わってきます。それによって魚の反応も変わります。
一日の中でどれぐらいの速度で落とせば反応するか探ってみるとよいでしょう。
誘いの注意点
誘いで魚をひきつける事は可能になりますが、注意すべきこともあります。
それは撒きエサとの同調です。投入地点では、マキエとサシエは同調しているかもしれませんが、誘いを入れるとサシエが手前によってきてしまいます。
コマセの投入地点を変えるか、ウキを流す位置をあらかじめ遠い場所にしておき、誘いながらコマセと同調させるのがよいでしょう。
コマセとサシエの同調は非常に重要な部分です。誘いのテクニックだけにとらわれず、エサの同調という基本を忘れないようにしてください。
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【あとがき】
今回の記事を書き終えて、改めてフカセ釣りの奥深さを感じました。単にエサを投げ込んでマキエを撒き、そのまま浮きをじっと見つめるだけがフカセ釣りではないことを、私自身も執筆を通じて再認識できた気がします。昔からチヌのフカセ釣りは「忍耐と待ちの釣り」というイメージが強かったのですが、実際には待つだけではなく、いかに能動的に誘いを入れて魚のスイッチを押せるかが勝負の分かれ目になる。それを読者の皆さんに少しでもお伝えできていれば幸いです。
なぜこの記事のテーマを選んだのかといえば、「チヌのフカセ釣りは本当にシンプルでいて、実はとても繊細な釣りである」という魅力を改めて共有したかったからです。道糸やウキの動きを凝視しながら魚との駆け引きを楽しむスタイルは、ある意味で釣りの醍醐味が凝縮されているように思います。その中でも特に“誘い”というテクニックは、チヌをもう一押し食わせるきっかけにもなれば、逆に動きを入れすぎて逃がしてしまうリスキーな面もある。まさに、一筋縄ではいかないチヌ相手だからこそ成り立つ戦略であり、そのバランスがフカセ釣りをより奥深いものにしてくれると強く感じています。
さて、この記事を執筆するに至った背景としては、2025年に開催された釣りフェスが大きなきっかけになりました。横浜で開かれたこのイベントには多くのメーカーやインストラクターがブースを構えており、私も真新しい製品のチェックや、最新の釣り事情を探るべく足を運んでいました。その中でも特に印象的だったのが、マルキユーさんのブースでインストラクターの方が熱弁していた“誘い”の重要性に関する講習でした。フカセ釣りというと、どうしてもサシエが自然に落ちていくイメージが強いのですが、その方曰く「自然な落下を演出するだけでなく、意図的なアクションを加えることでチヌが抱える迷いを取り払う瞬間が作れる」とのこと。ちょっとした誘いが効かない場合もあるが、魚のレンジや活性、さらには海の状況に合わせて何通りも試してみる価値がある、という話に強く惹かれました。
実際にその翌週、私は西伊豆の堤防へと足を運び、そこで早速“誘い”を試してみることにしました。正直、最初は半信半疑でしたが、どうしても「誘えば釣れるかもしれない」という期待感が膨らんでしまうのが釣り人の性です。まずはフリーフォールの誘い方を徹底的に意識してみました。竿をゆっくりと立てながら道糸を回収し、サシエを浮かび上がらせた後、数秒かけてフリーフォールさせる。この作業を慎重に繰り返していると、ラインが不自然に止まった瞬間がありました。「あれ、根掛かりかな?」と一瞬思ったのですが、その後スルスルと走り始めたので、すかさずアワセを入れたら45cmほどのチヌが上がってきたのです。あの瞬間は本当に言葉では言い表せない喜びで、しかも釣りフェスで聞いた話とリンクした成果だったので、達成感もひとしおでした。
このとき改めて感じたのは、チヌのフカセ釣りは一見すると単純な釣りに見える一方で、「エサをここにあるよ」とアピールする誘いの技術が、ギリギリで食わない状況を突破するカギになるということです。誘いを入れると、どうしてもマキエとの同調が崩れるリスクがあるため、普段あまり誘わないという方も多いのかもしれません。私自身も、堤防などで周りを見渡してみると、ウキをじっと見守るだけの方が大半という印象を受けます。「フカセ=待ちの釣り」という先入観があるのかもしれません。しかし、マキエとの同調を意識しつつ、少しでも違和感なくサシエを動かすことができれば、チヌが怪しまずに反応してくれる場面があるのだと実感しました。
そういえば、釣りフェスでお会いしたインストラクターの方も「最初からがんがん動かすのではなく、3分以上はサシエを自然に流してみてから、タイミングを見計らって誘いを入れるのがいい」というアドバイスをくれました。記事にも書いたように、誘いはやりすぎると逆効果になることがあります。一投に2,3回程度、間隔を十分に開けてアクションを入れれば、それだけでチヌが違和感を持たずに食い気を出してくれるケースがあるようです。実は私が西伊豆で試してみたときも、一投につき一度か二度だけ竿を立ててラインを張る程度のシンプルな誘い方に留めました。それだけでも、実際には充分なアピールになったのだろうと思います。
また、私が長年釣りをしてきた中で気付いたのは、「誰かの何気ないひと言が、自分の釣りの幅を大きく広げてくれる」ということです。今回は横浜の釣りフェスでのインストラクターの言葉がその代表例ですが、これまでにも釣り場で出会った方々との会話から生まれた気付きがたくさんありました。たとえば、テトラ周りでのカーブフォールの活用法はロックフィッシュをメインにしている仲間から教えてもらったものですし、ジャンピングについては堤防で隣り合った見知らぬ方が「底に餌が溜まってるときは、軽くしゃくって“エビが逃げる”動きを意識するといいよ」と耳打ちしてくれたのがきっかけです。そうした一つひとつの交流が私の技術や考え方をアップデートさせてくれるので、釣り場での会話は本当に侮れません。
このあとがきを読んでくださった方の中には、「誘いって難しそう」「フカセ釣りで動かすのはなんだか怖い」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際にやってみると、竿をすっと立ててゆっくり下ろす程度の簡単なアクションからでも十分に効果を得られることがあります。あくまで“魚が気付くか気付かないか”、あるいは“エサを食べるきっかけを与える”ための行動なので、そこにものすごいテクニックが必要というわけではありません。もちろん、海の中の状況やチヌの活性、エサの種類などを総合的に考えないといけない場面もありますが、最初はシンプルなやり方で十分です。どちらかといえば、意識しておきたいのはマキエとの同調を崩しすぎないこと、誘うタイミングを慌てず冷静に見極めることではないでしょうか。
最後に、このあとがきをお読みいただいている皆さんに、私からのメッセージをお伝えしたいと思います。フカセ釣りは奥が深いからこそ、時に「もう釣れないんじゃないか」と落ち込んでしまうこともあります。しかし、その日の天候や海の状態、魚の活性に合わせて自分なりのアクションを試行錯誤し、成功へとつなげたときの喜びは格別です。ぜひ、この記事の内容をヒントにして、次の釣りのチャンスが訪れたら誘いのテクニックを実践してみてください。「ここだ」というタイミングで竿を立て、サシエをフリーフォールさせる。あるいは、小さなアクションをつけてみる。そんなちょっとした変化がチヌのハートを射止めるカギになるかもしれません。