フカセ釣りに欠かせない撒き餌は、魚を集めるだけにとどまらずマキエワークやコマセワークと言われるように魚をコントロールするのに役立ちます。
餌取りをかわして本命の魚を釣るためには撒き餌のコントロールは必須となります。ここでは撒き餌について考察していきます。
撒き餌の基本
撒き餌の役割は、魚を寄せて釣りやすくすることです。付け餌と同調させることがとても大切になります。
ウキ釣りで使われる餌は、コマセと付け餌です。
関東や東北地域では、コマセといい、関西・九州では撒き餌もしくは、マキエといい、中には寄せ餌と呼ぶ人もいます。
その名の通り、魚を寄せるために海に撒く餌のことです。撒き餌がなくなってしまえばフカセ釣りが成立しなくなってしまいます。
撒き餌の役割
フカセ釣りにおいて撒きえさはなぜ撒くのでしょうか?
魚を寄せ集めて、釣るためなのは当然ですが、ただ闇雲に量を撒けば釣れるという訳ではありません。
一度に撒く撒き餌の量が多ければ魚は沈んでいき、少なければ浅い方へあがってきます。
撒き餌の量が少なく、撒く間隔が長ければ魚はあまり寄ってきません。撒くタイミングや量をうまく調整することが大切です。
チヌを攻略する撒き餌
チヌを狙いのタナで釣るための方法としては、まず チヌに食い気を起こさせるため、撒き始めは1投につき5~6回狙ったポイントに撒き餌をします。ポイントは1投あたりの撒き餌の量を少なくして、回数を多く撒くことが必要です。
投入間隔を短くして常に餌を撒き続けているような状態にすると魚の寄りは良くなります。潮の流れの速いときはポイントが流れてしまわないように早く撒き餌を撒き、潮の流れが遅いときは間隔をあけて撒くことが大切です。
チヌ釣りの撒き餌(コマセ)
チヌ釣りでは、様々な撒き餌を使用します。
スイカやヌカなどを使ったりもしますが、最も一般的なのが配合エサとオキアミです。
配合エサは撒き餌に重さを付けたり、集魚性能を高めたり、まとまりをつけたりする役割があります。
配合エサの役割は以下のようなものがあります。
・集魚・・・魚を寄せる最も基本的な要素です。
・比重・・・潮の流れに対応したり、底にポイントを形成したりします。
・粘り・・・まとまりをつけて遠投を可能にします。
・バラケ・・・アピール度を高めて魚を浮かせたり広範囲の集魚に役立ちます。
・濁り・・・煙幕によるエサの存在感を出し、魚にエサを気づかせます。
・増量・・・オキアミからでた水分を吸水し、集魚性能のあるエサを増量し長時間魚を寄せることができます。
配合エサは様々なものが販売されており、その場や状況に応じて、うまく使い分けることが大切です。
有名な釣人が使っている配合エサの組み合わせだから優れているというものではなく、その釣人のタックルバランスや付け餌、釣るタナやポイント、釣り方や時間帯に合わせて自分のベストを見つける必要があります。
おすすめの撒き餌
参考までに個人的に最近使っているシンプルな配合エサのブレンドはマルキューの餌で、
チヌパワー激重1袋 + 爆寄せチヌ半袋 +オキアミ1.5kg +激荒1袋 +海水適量
このブレンドでは、重さとまとまり、そして集魚性能を高めたブレンドとなっています。
遠投することが可能で、沖合いの地形の変化する場所を攻めることができ、水深が深い場所や潮の流れの速い場所でも底にポイントを形成することができます。
このブレンドのまま浅いタナを攻める場合には、配合エサを混ぜ合わせる際に空気を含ませて軽く混ぜ合わせます。
餌を撒くときには、ヒシャクのカップで撒き餌を切るように撒くと表層で拡散する餌になります。
水深が3m程の釣り場には向きませんが、関東から瀬戸内であればどこでも使えるかと思います。
ヒシャクの重要性
配合エサの種類も重要ですが、マキエワークがうまくなくてはフカセ釣りで餌を同調させることはできません。
そこで大切になるのがヒシャクです。初心者から中級者に関しては、正直ここには少しこだわってもらいたいアイテムです。
どんなに集魚力に優れた撒き餌であっても、狙ったポイントに投入できなければ、威力は半減します。
撒き餌は仕掛けの投入前に1回、投入して1回、流して一回、仕掛けの回収時に1回で、一連の流れで計4回で2分間隔とすると、1時間で120投になり、6時間の釣行では700回を超える数の撒き餌を打つことになります。ゆっくりのペースでも500投はすることになるため、ヒシャクを使う頻度はかなりの数になります。
特に遠投したりする場合は、疲労の元となりますので、使い勝手の良いヒシャクを選びたいものです。
カップの形状によって撒く量も変わるため、できれば大小2つ、無理ならば小さいほうがコントロールがしやすく、投入をミスしても大きなポイントのずれになりません。シャフトの長さも遠投・近投用で2つ欲しいところです。
どちらにせよ、フカセ釣りを続けるのであればそれなりによいヒシャクを2つ用意することをおすすめします。
磯でヒシャクを流されてしまった、海に落としてしまったという人も聞きますし、2つあればその日はなんとか釣りを続けることができます。
ヒシャクなんて何でもいいと思われがちですが、プロの人ほどヒシャクはメーカーのものでなく、こだわり抜いたオーダーメイド品を使っていたりします。魚にサシエを食わせるには、撒き餌をコントロールしてうまく使いこなせるかどうかが鍵となるでしょう。
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まとめ
撒き餌は魚を釣るためには欠かせないものです。
撒き餌がなければ、フカセ釣りは成立しません。
配合エサのブレンドや個々の餌の性能を見直して、コントロール性能の良いヒシャクを使えば、釣果もさらに良くなるはずです。いま一度、撒き餌やヒシャクに関して考えてみると釣りが上達するためのヒントがあるかもしれません。
あとがき
この記事を書き終えた今、改めてフカセ釣りにおける撒き餌の重要性を強く感じています。撒き餌は単なる「魚を寄せる」ための手段ではなく、まるで魚を導き、釣り人の思い通りに動かしてくれるような魔法のツールと言ってもいいかもしれません。実際、闇雲に大量に撒けばそれだけ釣れるというわけではなく、タナの調整や潮の速度、そして魚の活性に応じて撒き餌の量やタイミングを変えていく必要があります。その繊細なコントロールを通じて、仕掛けと魚とが“同調”し、狙った魚を誘い出す醍醐味こそが、フカセ釣りの奥深さを改めて教えてくれたと感じています。これこそが、本記事を通じて最も強調したかった点のひとつでした。
さて、私がこのテーマについて書こうと思った背景には、実際の釣行体験が大きく影響しています。特に印象深かったのは、福岡の博多湾で43㎝のチヌ(黒鯛)を釣り上げたときのことです。あのときは気温25.0℃、風は南から1.1m/s程度で比較的穏やか、気圧は1005hPa、潮位は120.8cm、そして若潮でした。若潮は大潮や中潮ほど劇的に潮が動くわけではないため、チヌの活性がどうなのか正直やや不安でしたが、それでも試行錯誤しながら撒き餌を打つタイミングや量を変え、そして仕掛けを投入する場所と回収のタイミングを工夫することで、狙い通りにチヌを引き寄せることができました。あの瞬間、フッとウキが沈み込み、合わせた瞬間の手応えは今でも忘れられません。博多湾は市街地にも近い一方で、ポイントによっては意外と潮の流れが複雑だったり、魚影が濃かったりと、奥が深い場所です。そこで、いかにしてチヌを自分の狙いのタナに引き寄せるか—その答えの大きな部分を占めていたのが撒き餌のコントロールでした。
この釣果を上げるまでには、実は何度か失敗もしているんです。潮回りが似ている日には同じように撒き餌をすればいいんじゃないかと簡単に考えていたこともありました。しかし、いざやってみると微妙な風向きや風速の違い、あるいは他の釣り人が撒いている餌の影響など、現場ならではの条件が積み重なって思うような釣りができず、何度も空振りを味わいました。そんなときこそ釣り仲間と話し合い、撒き餌の配合や撒き方を修正していくことで、「今日はこういう状況だから、配合エサは重めで、撒くタイミングはもう少し短くしよう」といった判断が自然とできるようになってきます。特に、地元の釣り仲間に教えてもらったのが「回数を多く、でも一回の量は少なめ」というスタイルでした。はじめは大雑把にまとめてガバッと撒いていたのですが、少しずつ細かく刻んで撒くスタイルに変えたところ、チヌの反応が徐々に良くなっていったんですよね。「撒くたびに魚が少しずつ集まってくる」――そんなイメージを常に頭に置いておくと、仕掛けを投入するタイミングも変化しますし、自然と釣果も伸びていきました。
また、メーカーの担当者の方と話す機会があったのも大きな転機でした。ある配合エサの特性を聞いたときに、「このエサは比重が重いから底までしっかり落ちてくれるけど、表層でのアピールには弱いんですよ」というアドバイスをもらいました。そこから比重の違うエサを試してみたり、粘りやバラケ具合でどれだけマキエの拡散範囲に差が出るのかを体感したりするうちに、あらためて「撒き餌というのは本当に奥が深いものなんだなあ」と痛感したのを覚えています。それまで「何を混ぜても大差ないでしょ」と楽観的に構えていたところがあったのですが、実験的にさまざまなエサの組み合わせを試してみると、潮の流れ方や深さによって面白いくらい釣果に差が出るんですよね。たとえば、深場でチヌを狙うなら比重があるエサを使ってしっかり底にポイントを作り、潮が遅いときは撒き餌の回数を減らす代わりに量を調整するといった具合に、状況に応じた使い分けが見えてきました。
ヒシャクに関しても、「なんでもいいんじゃないの?」と思っていた過去の自分を叱りたいくらいです。実際に1時間あたり100回以上、6時間なら500回以上も使う可能性がある道具ですから、手になじんで、自分が撒きたいところに正確に餌を飛ばせるかどうかは釣果に直結します。遠投が得意な長いシャフトのヒシャクと、近距離を狙うための短いシャフトのヒシャク、この2種類があるだけで現場の対応力は格段に増します。一度、磯の釣り場でヒシャクを海に落としてしまったことがあり、そのときは予備を持っていなかったため遠投がままならず、散々な結果に終わりました。それ以来、ヒシャクは必ず2本以上持ち歩くようにしています。プロや熟練した釣り師ほどヒシャクひとつにもこだわり抜いていて、メーカーの既製品を自分で改造したり、オーダーメイドの特注品を使ったりしているという話はよく耳にします。釣りは「仕掛け」と「狙いのタナ」の組み合わせだけで成立するものではなく、撒き餌も含めてすべてが絡み合い、初めて思い通りの釣果につながるものなんだなあと、改めて感じさせられました。
最後に、この記事を読んでくださった皆さんには、「フカセ釣りは手間ひまがかかるけれど、その分だけ釣れたときの喜びが何倍にもなる釣りなんだ」ということをぜひお伝えしたいです。配合エサのブレンドからヒシャクの選び方、そして撒き餌のタイミングまで、一見すると覚えることが多いように感じるかもしれません。でも、そこにこだわり始めると、どんどん釣りの世界が広がっていきます。「次の休みの日には、自分なりの撒き餌の組み合わせを考えて試してみようかな」と思っていただけたら、これほど嬉しいことはありません。この記事が、みなさんのフカセ釣りライフをより豊かにするきっかけになれば幸いです。