チヌやグレのフカセ釣りやダンゴ釣りなどをしていていつも感じるのは、釣りには釣れる前兆のようなものがあり、『あっ釣れそう…』と感じる瞬間が1日に何度か訪れます。
ここでは魚の釣れる時合いについて見ていきましょう。
わかりやすい時合い
最も簡単でわかりやすい時合いが訪れるのが、朝マズメと夕マズメです。
朝方マズメは日が昇ってから2時間ぐらいで、朝イチ餌を撒いても小魚すら出てこなかった海に、パラパラと餌取りが現れて、ツケ餌が取られるようになってくる時間帯です。
朝マズメはいきなりウキが消し込んだり、竿先まで引ったくるようなアタリがいつきてもおかしくありません。
遅くても午前9時ぐらいまでには、一度時合いが訪れると考えて良いでしょう。
また、夕マズメでは暗くなってきたなーと感じる時間帯が魚が活発に活動する時間帯になります。
釣り糸が見えなくなるので、釣り人にとっても釣りを終える時間という人も多いのではないでしょうか。
しかし、終わりだからといって気を抜くことなく、ラストチャンスと考えて集中することをおすすめします。
むしろ、14時から15時ぐらいまでの時間は個人的にはあまりいい思いをしたことが少なく、その時間帯は休んでおいて夕方に全力を注ぐ方が良い釣果に恵まれることが多いです。
磯場の渡船では14時から15時に上がりとなってしまうので、残っている餌をドカ撒きすることで魚が浮いてきて、いい思いをしたこともありますが、夕方まで釣りができるようであれば日が落ちる時間帯のほうが釣れることでしょう。
エサ取りが示す時合い
エサ取りの代表格であるフグや、ネンブツダイ、スズメダイや小鯖、小アジなどの小魚は時合いを教えてくれる魚でもあります。
ウキが馴染まない、着水と同時に餌がなくなるといったことが続いていて、どうしたものかと苦労している最中、突然に餌が取られない時間帯がやってきます。
オキアミが取られずに戻ってきたなどといった場合、それは大型の魚が入ってきた時合いでもあります。
判断の基準は、さっきまで厄介だった小魚が急にいなくなったという場合です。
小魚を捕食する大型の肉食魚が回遊している可能性もありあますが、チヌやグレなどが活発に活動を始めている可能性もあります。
底付近までオキアミを通すことができれば、大型のチヌやグレが食ってくる確率が高まります。
通常、大型の魚は小魚が撒き餌に群がる様子を遠くから見て安全性を確認しています。
ある程度の時間が経つと、この撒き餌は安心だと感じて近づいてきてエサを食いはじめます。
そのため、餌取りが多い時間は撒き餌の中心から外れた位置に仕掛けを流し、餌取りが落ち着いて大型の魚が入ってきたと思われる時合いになると撒き餌の入っている場所を積極的に狙うのも良いでしょう。
餌取りもいない状態の時合い
全くあたりすらもらえない厳寒期や春先などは、ツケエサのオキアミがそのままの状態で帰ってくることもあります。
厳寒期の時合いだなと感じるのは、オキアミの頭が取れていたり、ハリからズレていたりした場合やハリスが傷ついていたりする場合です。
よく観察しなければわからないですが、わずかながらにサシエサに変化があります。
あっこれは齧ったな…。と感じたら、ハリにつけるエサを丁寧にエサ付けし、ウキや竿先の動きを注視して小さなあたりを見極めましょう。
このタイミングでハリを小さくしてエサを小さくつけると食い込みが良くなることもあります。
海面のざわつきはチャンス
魚が水面でボイルしたり、湧きグレが出てきたりといった状態になるのも時合いがきている証拠です。
自分のウキ周りだけでなく、周囲の海表面の状態にも気をつけてチャンスを逃さないようにしたいものです。
魚による海面のざわつきだけでなく、風による波風も魚にスイッチをいれるキッカケになります。
ベタ凪でウキには全く反応がなかったのに、風で海が荒れだすと連続ヒットということもよくあります。
特に内湾などの比較的波の穏やかな場所では、海が荒れたタイミングで時合いがきたと感じることが多いように思います。
一方で堤防外向きの海などでは、風がなくなって海が穏やかになった瞬間によくあたったということもあります。
風による海表面の変化は、時合いの訪れとなりますので覚えておくとよいでしょう。
潮止まり前後
定番の時合いではありますが、
『上げ7分、下げ3分』
『上げ3分、下げ7分』と言われるような潮が止まって動き出す瞬間は魚の活性があがります。
必ず魚がよく釣れるという訳ではありませんが、潮の動きはじめにはアタリが連発することが多いです。
場所によっては動き出しから少し経って上げ5分下げ5分のようなところもあります。
潮の動きと釣り場の傾向が掴めれば、時合いを逃すことなく釣りができるでしょう。
干満差や満潮時間などはタイドグラフで事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
ここでは魚の釣れる時合いに関して見てきました。釣れる前には何かしらの前兆があることが多いです。場数を踏むことで釣れそうな時間帯に集中して釣りをすることができ、効率的に釣果をあげることができるようになります。
日々の釣りでは、時合いとなる小さな変化に気をつけて釣りをしてみると面白いでしょう。
【あとがき】
今回の記事では、「時合い」という視点から魚の活性や釣りのタイミングについてまとめました。こうして書き終えてみると、改めて釣りという趣味の奥深さを実感させられます。この記事を執筆するにあたり、何度も過去の釣行経験を振り返り、あの瞬間の潮の動きや海の表情を鮮明に思い出しては、実際の釣り場にいるかのようにワクワクしながらキーボードを打っていました。私自身はチヌやグレのフカセ釣りを中心に楽しんでいますが、ダンゴ釣りなど他の釣法にも通じる共通点があるなと感じますし、「釣りの引き出し」を増やしておくと、その日の状況に合わせた的確なアプローチができるようになるのではないでしょうか。
そもそも、どうして今回「時合い」や「釣れる前兆」をテーマに書こうと思ったのかというと、日々の釣行の中で「あ、今だ。そろそろきそうだな」という予感のようなものを感じる瞬間が確かに何度もあったからです。釣りをしていて、急に海面のざわつきが増したり、いままで嫌になるほどツケエサを取っていたフグがぱったり姿を消したり…そんな小さな変化に気づけた時に限って、途端にウキが勢いよく沈んでいく。釣り人の多くが経験したことだと思いますし、私自身も本当に不思議で面白いなと感じ続けています。そういった経験を少しでも形にして共有することで、「また次の休日にでも試してみたいな」と思ってもらえたら嬉しい、そんな思いを込めて筆を進めました。
執筆にあたり、過去に印象的だった釣りのエピソードをいくつか思い出しました。その中でも特に忘れられないのが、結婚して間もないころ一緒に釣りに行った釣り素人の妻からの「そんなにフグに餌を取られて悔しいなら、釣り方を変えたら?」という一言でした。朝からずっとフグにツケエサをさらわれて、全然本命のチヌにアタリが出ない日があったんです。フカセ釣りの醍醐味を妻に語りたいのに、あまりに釣れないもので半ば意地になっていた私に、彼女が横でポロッと放ったのがこの言葉。「釣り方を変える」なんて、釣り歴の長い私からすれば「わかってるよ…」と思う部分もあったのですが、その日は少し抵抗があって続行していたんです。ところが、もう一度落ち着いて状況を観察し、仕掛けのタナを少し深めにしたり、フグが寄り切れないようにダンゴ釣りを試してみたりといった工夫を加えたところ、意外なほどに釣果が変わったんですよね。結局その日はお土産になるチヌをゲットできて、何だか妻の助言に頭が上がらなくなった記憶があります。
また、この時合いに関する話を書いている最中に、我が家で飼っている金魚にも“地合い”があることを思い出しました。朝、私が水槽に近寄ると、金魚は「餌をくれるぞ!」とばかりにソワソワと泳ぎ回るのですが、夜遅い時間帯だと水槽を覗いても完全に気配を消しているんですよね。金魚でさえ餌に対して活発になるタイミングがあるわけで、海や川などの広大な環境で生きる魚たちには、もっと複雑で繊細な“時合い”や“スイッチ”が存在するのだろうな、とあらためて思わされます。海水魚と淡水魚、スケールも生態も異なるとはいえ、いずれも「餌を食べるタイミング」がある。同じ生き物として考えると、興味深い共通点ですよね。
それから、記事にも少し触れましたが、ニジマス釣り堀の管理人さんから聞いた話も私の中では印象深いです。管理釣り場では常に魚が豊富に放流されているので、時合いなんてあまり関係ないかと思いきや、やはり朝イチと夕方前後は食いが活発になることが多いそうです。しかも、管理人さんいわく、個体によって体内リズムがあるためか、昼過ぎにぽつぽつ釣れる時間帯も必ずあるんだとか。海釣りとはまた状況が異なる場所とはいえ、「やっぱり魚には魚の都合があるんだな」と再確認しました。人間の都合で「ここで釣れてくれ」と思っても、魚の気持ちや自然のリズムは簡単には変えられません。だからこそ、それに合わせて釣り方を変化させたり、観察力を養ったりする面白さが釣りにはあるんですよね。
この記事を読んでくださった方には、ぜひ「時合い」という言葉を頭の片隅に置きながら釣りを楽しんでいただきたいと思っています。初心者の方は、最初はどうしても「釣れた!」という成功体験を得るのが難しいかもしれません。でも、朝マズメや夕マズメなどのわかりやすい時合いを狙ったり、撒き餌をしてみたり、小さな海の変化を見逃さないようにしてみたり…それだけでもきっと釣果は変わってくるはずです。また、ある程度釣りになれてきた方であっても、よりシビアな状況下で大型の魚を狙う際には、ちょっとした変化を意識して仕掛けを調整してみると面白い発見があるでしょう。釣り場に長くいると体力的に疲れることもあるかもしれませんが、その疲れを少し休憩でリセットして、ここぞという「時合い」に全力を注ぎ込む。このメリハリこそが、良型の一尾との出会いを生む鍵になるのではないかと、私自身感じています。
もし、このあとがきや記事全体を読んで「よし、今度の週末は試してみようかな」と思っていただけたなら、こんなに嬉しいことはありません。どんな魚でも、動き出す瞬間や活性が急に上がるタイミングはあります。そこを捉えられた時の興奮は何にも代えがたいものです。特にフカセ釣りやダンゴ釣りでは、魚との駆け引きと仕掛けの繊細なコントロールが求められる分、時合いを読み切れたときの喜びもひとしおだと思います。是非皆さんも、それぞれのスタイルや経験を活かして、自分だけの「時合いの釣り方」を見つけてみてください。