釣り人が一度は釣ってみたい魚として憧れる石鯛は、引きが強烈で身も美味しいため、とても人気の魚です。
しかし、ベテランでも釣るのが難しく、試行錯誤を繰り返して釣りに挑む必要があります。
その成功の鍵を握るのはなんといっても「餌選び」です。
石鯛釣りでは、ウニやサザエといった高価な餌を使用し、初心者にはハードルの高い釣りに感じるかもしれません。
この記事では、石鯛が好むとされる高級な餌に加えて、餌の代用品や、スーパーにある餌などを見ていきましょう。
目次
石鯛釣りでは、なぜ餌選びが重要か
石鯛は非常に警戒心が強く、餌に対してかなり強い好みがあります。
適切な餌を使うことで、石鯛の興味を引きやすくなり、より効率的に釣ることができるでしょう。
地域や時期、活性によっても捕食する餌が変わるため、この餌が一番と言い切れないのが難しいところです。
そのため、複数の餌を準備してその日の好みを探り当てることが重要になります。
石鯛の特性と好み
石鯛は甲殻類や貝類を好んで捕食する傾向にあります。
石鯛の好物は、エサ取りにとっても好ましい餌であることが多いので、本命が釣れるようにエサ持ちがいいものを選ぶ必要があります。
それでは、具体的にどのような餌がおすすめなのかを見ていきましょう。
サザエ
石鯛の好む餌として有名なものでサザエがあります。
活きた餌を取り扱う釣具店で購入しますが、鮮度がよければスーパーに売られているサザエでも問題なく使えます。
釣具店で購入する際は、時期によって入荷していなかったり数が少なかったりすることがあるので、事前に問い合わせておくのがよいでしょう。
サザエは殻を割って中身だけを使います。
石鯛にとって食いつきやすく、アタリだしが早い特徴があります。
一方で柔らかいので、エサ取りにやられやすいので魚のアタリが少ない時に使用するのがいいでしょう。
サザエは遠投することもでき、石鯛がよく釣れるエサですのでエサ取りさえいなければおすすめの餌です。
小さなものは2,3個数珠掛けにして使い、大きなものは1粒刺しで使います。
【価格】 1個 100~250円目安 中~大サイズを使用
ガンガゼ
ウニの一種のガンガゼは、石鯛釣りでは秋口の定番餌として使われることが多い餌です。
トゲがあるのでウニ挟みなどでつかみキッチンバサミでトゲをカットして使います。
針に刺すときにはウニ通しという専用の道具を使ってウニを刺していきます。
石鯛を寄せたいときには、2つ掛けにして、上についているウニの殻を少し割って、においや汁が染み出るようにして寄せ餌として使います。
エサ取りが多い時には、トゲをカットせずに使うことで本命アタリに集中することもできます。
欠点としては、体積が大きく遠投した時に飛距離が出ないので、遠投には不向きです。
また、釣具店で購入した生きたガンガゼは弱りやすく、取り扱いがやや大変です。
釣り場では日陰で管理し、定期的に海水を入れ替えて保管するようにしましょう。
バフンウニ
ガンガゼ同様のウニの仲間で、ガンガゼと比べるとやや小さめのウニですが、トゲが小さく取り扱いしやすい特徴があります。
石鯛釣りにおいては、ガンガゼと並んで使われることが多く、基本的な使われ方は同じです。
2つ掛けや3つ掛けにする人もおり、食い込みやすい餌です。
大きめのガンガゼを付けて殻を少し割り寄せ餌として、食わせ餌に小さめのバフンウニを使用する2段ウニ仕掛けにしてもいいでしょう。
ヤドカリ
かつて石鯛釣りの定番餌として使われていたのはヤドカリです。
といっても、貝殻が2,3㎝のかわいいヤドカリではなく、10㎝以上の大きなヤドカリを使います。
現在では、ヤドカリを入手するのが困難で使っている人も少なくなりましたが、手に入れられれば、とても食いつきのいい餌です。
ヤドカリは殻を割って中身だけを使い、殻は撒き餌として使います。
ウニのように硬い頭の殻の部分と、貝のように柔らかい胴体の部分があるので、幅広い状況下で使用することができます。
エサ取りが多い場合にはそれでも取られてしまうことがあるので、エサ巻き糸などを使って、餌を針に刺したらその上からぐるぐると糸を巻き付けて使います。
デメリットとしては、ヤドカリはウツボがよく食ってくるということです。
釣り場や潮が悪い可能性もありますが、ウツボはヤドカリが好きなようです。
仕掛けをぐちゃぐちゃにされることも多く、鋭い歯を持っているので気を付けてください。
手で針を外したりせず、プライヤーなどで外すようにしてください。
私はウナギバサミを使っています。
赤貝
春先に使われることが多い赤貝は、石鯛釣りの必勝餌です。
もちろん人間にも好まれており、寿司屋でも見かけます。
私は冷凍のくわせ赤貝を使うことが多く、予備餌としてクーラーに入れています。
エサ取りには弱く、すぐに取られてしまうので、4,5個数珠掛けにして使ったりします。
春先などの のっこみ期やエサ取りの少ない地域で使うのがおすすめです。
イシガキダイが釣れてくることも多く、食い込みがいいのでアタリが早く出るのが特徴的です。
石鯛用撒き餌
デカバン
石鯛用に作られた撒き餌にマルキユーのデカバンというのがあります。
赤貝などが練り込まれた大型のブロック餌で、適当に割って仕掛けの投入前にポイントに入れておきます。
アタリが少なくなったなといったタイミングで、小分けにしてポイントに入れるとアタリが復活することもあります。
撒き餌はサザエなどの砕いた殻なども有効ですが、専用の撒き餌をうまく使うことで効率的に石鯛釣りをすることができます。
デカバンは撒き餌用ですので針につけることはできません。
貝類などの付け餌とうまく組み合わせて使うのがいいでしょう。
スーパーの品で代用
近くに釣具店がなかったり、急遽餌が必要になった時に、最寄りのスーパーに売られているもので石鯛の餌に代用できるものもあります。
アサリ
餌代を安く済ませるのであれば、アサリがおすすめです。
アサリは石鯛にとって大好物というまではいきませんが、目の前にあれば食ってくる餌の一つです。
餌持ちがあまりよくないので、6個ほど数珠掛けにして大きく見せるのもポイントです。
ベラやカワハギにとっては大好物ですので、エサ取りとの戦いになりますが、石鯛釣りの餌としての代用は可能です。
アサリは業務用スーパーにある冷凍のアサリがコスパがよくておすすめです。
アサリで釣れる魚はほかにもいますので、詳しくは以下の記事もご参照ください。
ムール貝
スーパーの冷凍品コーナーに置いてあることが多く、外国産の大粒のムール貝がおすすめです。
落とし込み釣りなどでカラス貝を使っている人が代用品として使うことがあり、石鯛だけでなくチヌなども釣れる可能性があります。
ワタリガニ
15㎝ほどのワタリガニも石鯛釣りの餌になります。
ただし、ワタリガニが好きな他の魚も多いのですぐに食べられてしまう可能性があります。
1匹丸ごとではなく、半分に割って、針先を殻から出しだ状態で使います。
まとめ
ここでは石鯛釣りの餌やその代用品について見てきました。
石鯛釣りで高価な餌を必要とするのは、石鯛が餌を選ぶ魚で、簡単には釣れないためです。
加えて、石鯛の周りには少なからずエサ取りがおり、いかにして石鯛だけに餌を食わせるかがポイントになります。
本命を釣るためには、餌選びをよく考えて、その場に最適な餌を選択できるかが成功の鍵となるでしょう。
【自作】一番簡単な誘導パイプ天秤の作り方。ブッコミ釣りや石鯛釣りに最適な天秤紹介
【あとがき】
今回の記事を書き終えて、改めて石鯛という魚の奥深さと、釣り餌選びの重要性をひしひしと実感しました。特に、ウニやサザエといった高級餌が用いられるイメージが強い石鯛釣りですが、実際にはそれだけにとどまらず、スーパーで入手できる身近な貝類や甲殻類をうまく活用するという方法にも大きな可能性があると感じています。こうした内容をまとめることで「石鯛釣りは意外といろいろな選択肢があるんだ」という発見を皆さんにお伝えしたかったのが、この記事の執筆の主な意図でした。
さて、ここからは執筆の背景やエピソードについて、もう少し深くお話しさせてください。そもそも私が石鯛釣りの記事を書こうと思ったきっかけは、昔からの釣り仲間たちとの会話でした。私が頻繁に釣りへ行く仲間の中には、磯釣り中心で石鯛を専門に狙う人、さらにはエサ釣り全般が好きであちこちの釣り場を巡る人まで、実にさまざまなスタイルの釣り人がいます。ある日、そのうちの一人が「最近はサザエやウニの入手が難しくなってきたから、餌を代用して釣る方法を探している」と言っていたのです。それまで私自身、石鯛に関してはウニやサザエが常識だと思い込んでいましたが、改めて周囲に聞いてみると、「いやいや、スーパーで売っているアサリで釣ったことあるよ」「ムール貝を試してみたら意外と反応良かった」という話が続々と出てきました。こうした身近な情報が面白かったので、いずれ一度まとめてみたいとずっと考えていたのです。
執筆中に特に思い出したのは、私が大学生のころに取り組んでいた魚の摂餌行動に関する研究でした。当時、私はサークルの先輩に誘われて渓流釣りを始め、やがてブラックバスや鯉の餌の嗜好性などにも興味を持つようになり、大学で魚の生態学を専攻することにしたのです。その過程で講義や実験を通して学んだのが、魚たちの摂餌行動は季節や水温、光量の変化に大きく左右されること、さらに、同じ魚種でも地域によって捕食対象が微妙に異なるという事実でした。たとえば同じ淡水魚でも、流れの速い川に棲む個体と、淀んだ川に棲む個体では好む餌が多少違ったり、微妙な嗜好性の差があるのです。もちろん石鯛のような海の魚にも同じことが言えます。だからこそ、「この餌が絶対に最強だ」と断言しづらいという特徴を持っていて、そこがまた石鯛釣りの魅力でもあるのだと感じています。
実験好きな私は、その後も釣具店だけでなくスーパーや市場など、さまざまな場所で餌になりそうなものを物色しては試すということを続けてきました。おかげでキッチン周りには釣り関連の道具がごちゃごちゃと増える一方で、冷凍庫の一角はいつもムール貝やアサリ、時には剥きエビなどで占拠されています。また、釣り餌メーカー「マルキユー」の研究員と懇意になってからは、さまざまな集魚材や練り餌の成分についての情報交換をさせてもらえるようになり、そこから得たヒントをもとに自分で配合を変えて試してみる、ということも繰り返してきました。たとえばウニそのものを扱うのが難しい時期には、市販の集魚剤に香りの強いエビ粉を追加してウニの香りに近づけようとしたり、バフンウニの代わりに小さめの蟹を使ってみたり……。結果はまちまちですが、その試行錯誤の過程がとても面白く、石鯛をはじめとした魚たちの生態を改めて学べるのがこの釣りの醍醐味だと思います。
また、私の自宅には金魚とフナを飼育している小さな水槽があります。淡水魚ではありますが、彼らの餌を食べる時の動きや匂いへの反応が、意外と海水魚の摂餌行動を考えるうえでも参考になることがあるのです。金魚やフナにも好き嫌いがはっきりあって、特定の匂いには寄ってくるものの、ちょっとでも味や硬さが合わないとすぐに見向きもしないなんてことが日常茶飯事。そこで水中カメラやガラス面からの観察を重ねながら、餌の固さや溶け方などを微妙に調整してみると、食いつきが変わる瞬間がしっかりと確認できます。この「餌を改良してみて、魚がどう変化するかを見る」という姿勢は、まさに石鯛釣りの現場でも大いに役立ちます。遠投が必要なときは餌が飛び散らないように固めに仕上げたり、逆に活性が高くてすぐ食ってくるときには柔らかめにして食わせ重視にしたりと、釣り場の状況や魚の活性を想定しながら、常に微調整を試みるわけです。
実際の磯での釣行を思い返すと、特に思い出深いのが初めて「代用餌」で石鯛を仕留めたときのことでした。あらかじめ用意していたサザエが予想以上に早く尽きてしまい、途中から仕方なくスーパーで買い足したムール貝を使ったのですが、それが偶然にも大当たり。到着したタイミングで潮回りも良かったのか、立て続けに石鯛がヒットし、あっという間にクーラーボックスが賑わったのです。その場に居合わせた釣り仲間と「餌って本当に奥が深いね」と話し込んだのを今でもよく覚えています。帰り際、常連らしき磯釣り師の方に話をしたところ、「昔はヤドカリやカニなんかもよく使ったものだよ。要はそのときに魚が何を求めているか、臨機応変に対応することが一番大事だね」と、さらりと的を射たアドバイスをいただきました。そうした先人の知恵を聞くと、改めて石鯛釣りの世界の奥深さを思い知らされます。
こうした経験を経て私が強調したいのは、石鯛という魚は高価な餌を使わなくては釣れないように思われがちでも、実はその選択肢は多岐にわたり、それぞれ状況に合った使い方があるということです。今回の記事では、サザエやウニのような定番餌、ヤドカリや赤貝といった昔ながらの必勝餌、そしてスーパーで手に入るアサリやムール貝までを幅広く取り上げましたが、あくまでこれは一例にすぎません。地域や時期、そしてその日の潮や水温、魚の活性など、さまざまな要素が複雑に絡み合いながら釣果は決まっていきます。だからこそ、「今日はこの餌が当たった!」「こんな代用餌でも意外に釣れた!」という発見があると、一気に釣りの醍醐味を味わえるのだと思います。
長々としたあとがきになってしまいましたが、私自身はこれからも餌選びの研究を続けていくつもりですし、季節の変わり目や新しい釣り場を訪れるたびに、新たな挑戦と失敗を繰り返すのだろうなと考えています。今回の記事が、少しでも多くの方にとって石鯛釣りやその餌選びの参考になれば嬉しいですし、あらためて「釣りって面白い」と感じるきっかけになれば幸いです。