気づかないうちに竿に入っている傷は、放っておくと竿の折れにつながります。
ここでは竿の傷を補修する方法をご紹介します。
特にブランクに傷が多い竿で実際に傷を補修してみました。
この方法であれば、バスロッドや磯竿、投げ釣り竿や様々な竿に応用することができるかと思います。
竿の補修とブランクの傷消し
使用した竿は、わかりやすいように岩に当たって擦り傷だらけの石鯛竿を使います。
10年以上前の竿のため至る所に傷があります。
特にガイドと反対側のブランクには折れに繋がりそうな深い傷も見られます。
石鯛竿はこういった岩場で使うことが多く傷や擦れは免れません。
ルアーロッドであればここまでの深い傷にはならないかと思いますので、石鯛竿の補修ができれば他の竿の補修もできるかと思います。
それではまず浅い傷を消していくために軽くやすりがけしていきます。
ヤスリがけ
まず様子見で800番でヤスリがけをしてみました。
軽い傷であれば1200番ぐらいから始めるといいかと思います。
この石鯛竿は800番でも傷が平らになる様子もなかったので600番まで荒くしてみました。
竿のトップコーティングが粉になって剥がれ落ちるので、外でするか風呂場などで流せる場所で行いましょう。
力を入れすぎず、ゆっくり丁寧に傷を消していきます。
ヤスリがけをすることで小さな傷は消えますが大きな傷は目立つようになりどこにどんな傷があったのかがわかるようになります。
私の場合は、思ったよりも大きな穴傷がついていたのでショックでした。
竿の表面のクリア層(トップコーティング)のみを削っていくようにして、竿のカーボン部分にはギリギリ到達しないように気をつけてヤスリがけしていきましょう。
基本的には細かい番手から様子見をしながらヤスリがけしていきます。
時々、水で濡らして粉を流すとクリアコーティングした時に消えそうな傷の把握ができます。
ある程度傷が消えたら、中性洗剤で竿を洗います。
余計な油分と竿を削ったことによる粉を洗い流すためです。
タオルなどで水滴を拭き取り、風通しのよい日陰でしっかりと乾燥させれば次の工程に移ります。
トップコーティングの下地作り
乾燥が終わった状態がこのような様子になります。
シマノの竿なのでスパイラルXが浮き彫りになっています。
しっかりと脱脂した上で、トップコーティングをしていくのでコーティングの不要な部分のガイドやグリップ部分にマスキングテープを巻いていきます。
マスキングテープを巻き終えたらトップコーティングです。
コーティング
竿の強度を決める部分でもありますのでここはケチらずにウレタンのコーティングをしていきましょう。
使用するのはこちらです。
SOFT99 ウレタンクリアー
2液性のウレタンで非常に強い皮膜を作ってくれます。
なんとガソリンにも負けない強靭なコーティング皮膜で車やオートバイの塗装などでもよく使われています。
光沢も美しく使って間違いないウレタンクリアーです。
価格は少し高くなりますが、中途半端なものを使うぐらいなら圧倒的に仕上がりも良くおすすめです。
使い方 メーカー推奨
※マスクをして蒸気やガスを吸い込まないように注意し、直接皮フに付着しないように手袋を着用してください。
①塗る面のゴミ、油分、ワックス、サビ等をよく落としてください。
②カラーペイントを塗り終えてから2~5分後、塗る面から約15~25cm離してスプレーしてください。
一度に厚塗りしないで塗る面と平行に移動しながらカラーペイントよりも広い範囲にやや薄めに均一に数回塗り重ねてください(1回塗る毎に10分程度乾燥させてください)。
※ウレタンクリアーのスプレーダストを目立たなくするには99工房『ボカシ剤』(別売)がご使用できます。
※コンパウンドなどでの最終磨き仕上げの必要はありません。 ソフト99
塗装してみた結果
実際にウレタンクリアを塗装していきます。
塗装の1度目は軽く吹き、2回目以降で厚みを出していきます。
私は4回に分けて塗装しました。
もし、液だれしてしまった時にはコンパウンドをかければ綺麗になりますのので、焦らずに慎重にスプレーしていきましょう。
仕上げ
仕上がりました。少し気になるところは車用のコンパウンドで磨いてもいいです。
正規品よりも厚めのコーティングになっているので、次からの釣りで多少の傷がついても安心して使用できます。
まとめ
ヤスリがけをしてウレタンを塗装することで、色艶も復活して綺麗な竿に仕上がりました。
色抜けなどが気になる場合はウレタンをスプレーする前にカラーリングしてみてもいいかと思います。
竿の傷を補修するだけでなく、オリジナルカラーの竿に仕上げることができます。
デメリットとしては、ウレタンが一回の使い切りになってしまうので、傷の補修をする際は他の竿などもまとめて補修することをおすすめします。
または、車のヘッドライトの黄ばみの補修も同様の工程でできますので、まとめて補修するのもいいかと思います。
私はたも網の柄もついでに補修しておきました。
補修は1日ほどで簡単にできてしまいますので、釣りに行けない休日に竿のメンテナンスをしてみてはいかがでしょうか。
この記事を書き終えて、改めて竿の補修やメンテナンスの大切さを強く実感しました。自分が普段から何気なく使っている道具も、丁寧に扱うことで長く付き合えるという思いを込め、今回の記事を仕上げたつもりです。とりわけ深い傷を修繕する工程や、美しいコーティングを施す工程は、釣りの道具を「ただ使う」だけではなく、愛着を持って「守っていく」ために必要なステップだと感じました。傷の補修は一見地味な作業ですが、実は竿の命を大きく延ばすうえでとても重要ですし、仕上がった時の感動は想像以上に大きいものです。
さて、そもそも今回の補修記事を執筆しようと思った背景には、ある出来事がありました。最近、釣り仲間の一人が新品で買った竿を見せてくれたのですが、その竿が想像以上に輝いていて、まるで一本の芸術品のように美しかったのです。ガイドやリールシートの付近にも指紋ひとつなく、グリップ部分もまだ全く使い込まれていない状態。私にとって馴染み深い道具のはずが、ピカピカのそれを眺めていると「自分もちゃんと手入れしていれば、こんな状態に近づけられたかもしれないな」と、まるで過去の自分のズボラさを突きつけられたような気分になりました。同時に、この友人のように綺麗な状態を保ちながら道具を使いこなすことに憧れも覚え、無性に自分の竿を見直したくなったのです。
そこで思い出したのが、以前に通っていた釣具店のオーナーとの会話でした。その店は、昔ながらの佇まいで、ロッド修理にも精通している店主が一人で切り盛りしている小さなショップです。まだ私が釣りを始めたばかりの頃、誤って磯竿を岩に強くぶつけてしまい、傷を深くつけてしまったことがありました。慌ててその店を訪ねたところ、店主は自分で修理ができるように手順を丁寧に教えてくれたのです。そのときは店主に釣竿を預けてしまいましたが、いざ受け取った竿を見たとき、見違えるほど綺麗になっていて感激した記憶があります。店主の話によると、傷をヤスリで丁寧に落とした上で、ウレタン系のコーティングをスプレーして固めるだけで、格段に強度が上がるのだとか。「ほんのひと手間なんだけど、それをやるかやらないかで竿の寿命はまったく違うよ」と語っていたことを、はっきりと覚えています。
その後、私は釣り経験を積むにつれてさまざまな釣り竿を試し、道具のメンテナンスに関してはいくつかのやり方を断片的に覚えたつもりでした。しかし、改めて友人の新品の竿を目にしたとき、そして昔の店主の言葉を思い出したときに、「一度自分の手で本格的に竿を補修してみよう」と決心したのです。そこで、今回の記事で紹介した方法を軸に、自宅でもできる工程を細かく確認しながら実践することにしました。特に複数の竿をまとめて補修するとウレタンスプレーの使い切りやコスト面を有効活用できるという点は、過去に店主から聞いた話と通ずるところがあります。私自身も使わなくなったバスロッドや、塩焼けが激しい投げ竿などを引っ張り出してきてまとめてコーティングをしてみたのですが、これが想像以上に楽しく、愛着もいっそう深まったのは大きな収穫でした。
このとき、思わぬ場面で釣り仲間から助けられたことも印象的でした。ちょうど補修を始めて翌日、釣りに誘われて少し離れた漁港へ出掛けたのですが、その仲間は私の取り組みに興味を持ってくれ、「竿をまとめて補修しているなら、俺の使わない竿もメンテしちゃってくれない?」と言い出したのです。聞けば、何年も放置されていたロッドが何本かあるとのこと。「このままゴミにしちゃうのももったいないし」とは彼の弁ですが、正直なところ私にとっても修理の練習台になるし、ウレタンクリアーを使い切るにはちょうどいい話でした。彼のロッドはガイドのスレッド付近に錆が広がっていたり、ブランク表面に傷が散在していたりと、まさに教科書的なメンテナンス対象。手間はかかりましたが、その分「こんなにキレイになるんだ!」という達成感を何度も味わえて、補修のモチベーションが落ちることはありませんでした。
実際にスプレーの吹き方や乾燥のタイミングを工夫していくと、最初のうちは垂れやムラに悩まされたものの、コツをつかんだ後はむしろその工程が癖になりそうなほど面白く感じられました。自分の竿はもちろん、友人の竿も見違えるほどツヤが増して、新品とまではいかないまでも、使い続けるうえで十分すぎるほど綺麗な仕上がりになったのです。その友人も大いに喜んでくれ、「ちゃんとメンテナンスすればまだまだ現役で使えるんだな」と目を輝かせていました。まさに釣り具が繋いでくれた、小さくも嬉しいエピソードでした。
今回の記事を通じて、竿という釣りの大切な相棒に少しでも愛着を持ってもらえたら嬉しい限りです。特に、傷を放置してしまうと、知らず知らずのうちに竿の折れやトラブルに直結するリスクがあることを忘れてはいけません。ちょっとした表面のダメージであっても、積み重なると大きな問題に発展しやすいのです。だからこそ、ヤスリがけやコーティングという地味な工程が、釣りそのものをもっと安全かつ快適に楽しむための要ともいえるのだと思います。やる前は面倒に感じるかもしれませんが、一度手を動かしてみると、これが思いのほか充実した時間へと変わっていくのを実感できます。
特に私のように、休日に釣りへ行けないタイミングがある方は、このメンテナンス作業を小さな「趣味の一部」として楽しんでみてはいかがでしょうか。大好きな竿をもっと長く使えて、しかも自分だけのオリジナル感を出せるというのは、釣り人として嬉しいものです。そして、その竿でまた新しい釣りに挑むときには、「この竿は自分がコーティングしたんだ」という自信と愛情が相まって、いつもとは少し違ったワクワク感を味わえるはずです。
最後になりますが、今回の記事が皆さんの釣竿に対する意識を少しでも変え、道具をより深く愛するきっかけになれば幸いです。きれいな竿を手に釣り場へ赴くと、なんとなく気持ちまで新鮮に生まれ変わったような気分になり、自然の中で竿をしならせる喜びも一層大きく感じられるものです。もし、記事を参考にメンテナンスを試してみようかなと思っていただけたら、それほど嬉しいことはありません。釣りは道具との対話があってこそ楽しさが増すスポーツだと思うので、ぜひ今回の記事をきっかけに、皆さんもご自身の竿を再確認してみてください。
この記事が、あなたの釣りをほんの少しでも彩り豊かにする一助となれば幸いです。